自分がどう生きたいか、どんなスタイルで生活したいか、という自分なりのオリジナルビジョンがない限り、人生を選択できない女性たちは増えつづけるのである。宗方らが九四年に行なったライフスタイル調査(柏木恵子編『女性の発達』)では、目本の女子大生のキャリア志向はアメリカ、スペインよりかなり低いという。家庭生活を重視しキャリアは追求しない「仕事より家庭型」、あるいは「消極的両立型」だが、目本の学生は、各質問項目に対して「どちらとも言えない」と反応する人が多く、明確なビジョンをもっていないことがわかり、「子育てもいいが、シングルも魅力」と迷っている人が多いことが判明したという。また、三〇歳以下の働く女性を対象とした一九九三年の愛知県の意識調査(『女性の発達』)では、自分が四五歳になった時、どんな暮らし方をしているかというビジョンについて質問したが、職業人としての明確な展望を女性は全くといって、もっていないことがわかったという。「仕事も続けたくないけど、結婚も大変」と両方ともに消極的なのである。生き方の選択肢は拡がったが、どう生きていいかわからないで迷っている若い女性が多いのである。ところで、こうしたA子さんのような生き方をみて気づくことがある。A子さんは、その時、その時で、流行にあわせた生き方をしているのだ。たとえば女性の大学進学という流行に沿うように受験勉強をし、女性の社会進出という社会現象にあわせて入社試験を突破している。留学もその時代の流行であり、家の経営を手伝ったり、セレクトショップをしてみたいという希望も、女性実業家流行の時代に沿って生きている。しかし、不況やバブル崩壊で生き方の流行がみえなくなり、自分自身が迷路に入ってしまったといえ、これは河合隼雄が指摘している「永遠の少年」の女性版「永遠の少女」症候群といえるのではないか。「永遠の少年」は、社会に適応することに困難を示し、自分にぴったりしたものがない。まだ本ものがみつからない、という状態におかれている。ところがある日突然上昇志向にもえて必死にがんばる。しかしこのがんばりには持続性がなく、すぐにやめて再び無為の生活に入る。そしてまた再び上昇しはじめるのだが、またすぐにやめてしまう。日本社会は外国の文化をとり入れて流行するが、すぐに姿を消し、次々と新しい文化や流行をとり入れるが定着しない。いわば「永遠の少年」社会だと河合は指摘している。その時々の流行にあわせて上昇し、すぐにあきて再び無為の生活を送る、という生活は、何ものかになることをこばんでいる「少女」といえるだろう。大人になりたくない、自分の生き方を決められない「永遠の少女」たちが増えているといえる。
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