生地を選べば、そのスーツはできたも同然

2011.07.09

「生地を選べば、そのスーツはできたも同然」イタリアの仕立職人はそんなふうに言う。それほど生地選びが大事だということでもある。また、「生地はワインと似ている」とも言う。織り上がったばかりの生地はまだ荒々しく、縫製するのが難しい。ワインも移動させたりすると暴れる。それを静かに寝かしてやると、熟成していく。生地は自然と縮絨がかかったようになり、ワインは芳醇さが増す。ブリオーニの場合、古いヴィンテージ生地はサロンでのオーダーに限られるが、ブリオーニ専用に織られた生地を用意するなど、最初からヴィンテージの風味を生地に求めている。それにしてもなぜ、コフィーアナンはブリオーニを選んだのか。ブリオーニの魅力はポケットのかたちやステッチといった細部ではなく、むしろ普遍言語のレベルにまで高められたその存在感にある。しかも吐界各地にある直営店には、ペンネで修業した職人が配されて顧客のあらゆるリクエストに応える。オーダーのための採寸から、プレタポルテとして店に並んでいる製品の袖丈詰めや裾上げ、さらには愛用しているブリオーニの袖修までをこなすことになる。つまり、そこでは服を介して顧客とブランドの信頼関係が築かれることになるのだ。ブリオーニとはイストリア半島沖の海上に浮かぶ島、つまり現在のクロアチアにある美しいリゾート地の名に山来する。当時はイタリア領であったブリオーニ島は、イタリアで最初のポロ競技大会が開かれた場所でもあった。ポロは貴族趣味と同義であった。ブリオーニのスーツやジャケットの裏地に、ポロをモティーフに織られた特製の生地があしらってあるのはそのためだ。エレガントの先駆者としての衿持が、そのブランド名には込められている。

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